山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

スプーン曲げてどうすんの?「二日月」1990年

あらすじ

中学3年生になったえりは転校生の菊池という女子と隣の席になるが、菊池は何かというと自分の「超能力」や「予言」を誇示する。やがて菊池はその超能力でえりとBF・伊達との仲を裂こうとしてくるが…。


超能力しかとりえのない地味女子VS普通の女子の恋愛バトル。
暗くて鈍くさい、パッとしない菊池ですが、ある日、スプーンが曲げられる、オーラが見れる、予知が当たるということで一躍学校で有名に!
最初はえりに頼りっぱなしだったのに調子に乗りだし、最近えりといいかんじになってる陸上部のイケメン・伊達くんの気を引き、二人の仲を裂こうと頑張ります。

「あのね、伊達くんね、こんどの大会で怪我するわ。
特にあなたがそばに寄ると伊達くんに悪影響を及ぼすの。
気の毒だけどあなた達二人は最悪の相性なの。
嫌味にとらないでね。心配だからいうのよ」

嫌味にとるなですって!! ハッキリ悪意じゃないのよ!!

信じないようにするえりですが、菊池の吐いた呪いの言葉を完全に振り払うことができない。えりはストレスで胃痛になります。やがて伊達くんの大会の日が来て…。

「ばかねえ岡崎さん、そのお弁当腐ってるわ」
腐ってる!? お弁当が?そんなことない。
ご飯だってママのいうとおり梅干しと一緒に炊いたしおかずも冷めてから詰めたんだから。
最新の注意を払って作ったんだから……。
だけど今日の暑さは異常だわ。もしかしたら、もしかしたら

不安でいっぱいだったえりですが、不吉なことを絶対に伊達くんに言わないように最後までこらえます。
結局、不安ながらも「菊池さんの言うことなんか信じない!」を貫いたえりが勝ってめでたし。伊達くんはイメージトレーニング(この作品が描かれた当時はまだ一般的ではなかった)で見事優勝しました。えりから話を聞いた伊達くんは、中学生とは思えない論理的な言葉で菊池さんのアイデンティティをバッサリ斬ります。

「菊池さんは気の毒な人だと思う。
スプーンを曲げたりオーラを見たりなんていうけど、あれは超能力でもなんでもないよ。
だって健康的に生活できる人間には必要のない力だもの。
むしろあれは退化すべき原始的な力なんだといってもいい。
ずっと昔……太古の人間が自然の脅威や危険に対して全く非力だった頃必要なものだったのかもしれない。
スプーンを曲げるという力は人間のパワーの底知れなさを証明しているとは思う。あれも一種の精神統一だもの。
だけどそれがスプーンではだめなんだ。
その力を僕のように走ることのイメージに使ったり、もしくは物を創造するエネルギーやインスピレーションに転換できなくては何の意味もないんだ。
菊池さんはせっかくのパワーをマイナスの方へ方へと使っているんだもの」

さらに伊達くんは「これは僕の偏見かもしれないが、超能力や霊的な力に魅かれるのは逃避的な人に多いと思う」という、各方面から反感買いそうな発言をしちまいます。いや私もスピリチュアルにハマる知り合いとかを見てるとそうとしか思えないけど…!

「現実の問題をちゃんと処理できる人はそんなものに頼る必要がないもの。
考えようによっちゃ、普通に健康的で楽しく暮らせる力はもうそれだけで超能力なのかも。
きみは菊池さんから不安を植えつけられてもそれと戦ってくれた。最も強くて健康的な人なんだ」

「それをいわれると恥ずかしいわ。菊池さんに意地を張っていただけなのよ」

伊達くんは人生何回目なの? そういえば中学生とは思えない髪型をしている。
えりや伊達くんは、悪い予言や占いのマイナスイメージに逆らって現実の問題を解決していける人。菊池さんは、生きにくい人生を霊的なものに頼って自分なりにしのいでいかなきゃならない人。私も物事がうまくいかない頃は風水にハマったりしてたから菊池の気持ちもわかるなぁ…。
山岸先生は「異能」を「何かの代償、失った何かと引き換えに得た力」として描くことが多いです。

収録コミックス

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