まさかこれで終わりじゃないでしょ?「ある夜に」1981年
8ページの短いお話。
『化野の…』と似た「死者が町を歩く」話ですが、あっちの主人公は自分が死んだことに気づいてないのに対して、こっちの女性達は全員理解してあの世へ向かってます。
4人の女性が町を歩く。一人は華の道、一人は砂の道、二人は石の道を歩く。
彼女達の歩く道は、生きていた時の行いの報いが表れているのだ。
途中で仲間に加わったおばさんは石の道を歩き、足が血まみれ。
「わたしはずーっと一人で歌を歌ってきましたからね」
「わたしなんか七人の子供を育てて歌なんかひとつも歌えなかったよ」
「ああそれで華の上を歩いているんですね」
一人で歌を歌うことはそんなに悪くないんじゃないか?と思うのですけど…。おばさんの歌で元気づけられた人だっているかも知れないじゃないですか。ジャイアンみたいな歌声なんだろうか。
でも実際に歩いている道に関わらずみんな、まあアスファルトの上みたいな感触ですよねーといったノリの中、一人だけやたら苦しいだの寂しいだの足が疲れただの、不平不満を言う女がいました。
「自分の幸せを考えるよりも他人の幸せを考えてきたわ。
そのあたしがあんなにも苦しんで、おまけに華の上も歩けないなんて」
この女は「私はこんなに尽くしてあげてる。だから、見返りがあるはず」と思ってるタイプですね。他人のために尽くしてるつもりで本当はすごく欲張りっていう。
「あたしはただの一度も加害者になったことなんかないわ。一度もないわ! いつも被害者だったわ」
このあたり、他のメンバーがこいつに超冷静にツッコミ入れてて好き。
「これでおしまいなんて、これで無になるなんて!
何かがあるはずよ。もっと何かが!」
『黒のヘレネー』を彷彿とさせるラスト。背景の賽の河原が怖い…。