山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

真っ白なレースの下の、甘く劣悪な臭い。「星の素白き花束の…」1986年

あらすじ

亡くなった父の愛人の娘(異母妹)を引き取ることにしたイラストレーターの聡子
初めて会う異母妹の夏夜(かや)は中学3年生。
夏夜は聡子のイラストから抜け出てきたような可憐な美少女だったが、異常なほど無口で陰気で偏食、そして男にだけはやたら愛想が良い奇妙な娘だった。


糖尿予備軍。
山岸作品に多そうで実はそんなにはない魔性のロリータもの。
目に入る男全てに媚びを売り、レトルト食品とお菓子しか食べない美少女・夏夜が不気味。
夏夜は基本的に男なら誰にでも媚を売るので、通りすがりのブ男にまで流し目をくれます。顔で差別しない良い子ですね。
見た目は妖精のような美少女なのに、中身は淫らで劣悪。それが夏夜。 姉の聡子は自分が身長170ある大柄な女のため、最初は「美しい自慢の妹ができた」と喜んでいたが、やがて妹の奇妙な行動に不安を抱く。 まず、男の客が来たからってコーヒーが冷めるまでめかしこんで登場するのはどうかと思うよ!

「ねえ、聡子姉さんにもパパはあれをしてくれた?
してくれないわよね、聡子姉さんには。
ああ、ガッカリしなくてもいいのよ。
友達に聞いてみても、みんなのパパもそんな事してくれなかったって」

友達に聞いたの!? ていうか友達いたの!?(いや、同性に嫌われそうなタイプに見えるので…)
夏夜ちゃんの話から推測すると、夏夜パパは妻(聡子母)を捨てるほど愛人(夏夜ママ)にのめり込んでいたが、愛人の死後はその娘(夏夜)を物心つく前から代用にしていて、そして夏夜ちゃんは毎日インスタント食品とお菓子で育ち、パパの酒代をツケにしてもらうために幼い頃から体で払っていて(?)、男に媚びを売る癖がついている、と。何このクズ親父…。でも夏夜はパパ大好き!と。

「パパはあれをあたしだけにしてくれたんだわ。
夏夜はきれいきれいきれいだって!」


…合意の上どころか得意げ。本人は嬉しそうだからいいか。
いやよくないよ! 父親のせいで倫理観がおかしくなってるんだよ! 聡子姉さんも唖然としてないで何とか言ってよ!

この話の夏夜ちゃんは中学生、同じく「ある日やって来た居候が魔性のロリータだった」というストーリーの『蛇比礼』の虹子ちゃんは小学生なわけですが、この二人の学校生活がすげー気になります。掃除の時間とか給食当番とか微塵も想像できない。

夏夜ちゃんは今は若いから妖精のような上辺だけで上手く生きていけるけど、美しい少女時代もいつか終わりが来ます。そして、夏夜ちゃんのような中身が伴わないタイプの美女はある日(30〜40代とか)急激に衰える日が来ます。そうしたらあとはニキビ面のデブチンになるだけ。…でも、むしろそうなった時に初めて夏夜ちゃんの人生は正しい意味で始まるんじゃないのか、と思いました。夏夜ちゃんという子は、美しさを失ってからでないと本当の意味で生きられなそう。『甕のぞきの色』の比売子ちゃんだって20kg太ったけど成長した感すごかったでしょ。夏夜ちゃんに、「人間」になってほしい。

最後に思ったこと。絵柄変えたあとの聡子のイラスト、人気出なそう!

収録コミックス

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