人間の意識を保ったまま動物になるって普通に恐怖だよね。「キルケー」1979年
あらすじ
中学生の奈津子、広、隆、進、小学生の道子。5人は山でのハイキングの帰り、バスに乗り損ね、山中を彷徨っていた。
日も暮れ弱気になっていた頃、5人は山の奥に家の灯りを見つけ、助けを求める。
その館に住んでいたのは大量の動物たちを飼う、妖艶な美女だった。
偏食が命を救うこともある。
神話上の魔女「キルケー」を題材とした、比較的シンプルなホラー。元ネタはギリシャ神話なのに着物姿に切れ長目のキルケーが新鮮。山岸先生は着物描くのが好きだな。
仲良し5人組の中で一人だけ性格悪い子がいたので、「この子が最初の犠牲者なんだろうなぁ」と思ったら案の定だよ!
キルケーさんの能力(?)は「人間を動物に変身させる」という、どこにでも出てきそうな単純なものなのですが、「人間の意識を保ったまま動物になる」ってよく考えたらすごくイヤだよなぁ…。
主人公の奈津子一人だけ、好き嫌いが多いおかげで助かります。すでに動物に変えられてしまった仲間たちが奈津子に寄ってきて、(逃げろ、逃げろ)と必死で示しますが、奈津子は無視してしまいます。
「逃げろ クェ 逃げろ」
「さっきのあの声、なんだか広くんの声に似ていた」
なぜしゃべれる動物(オウム)を採用したのか。
5人が館を見つけた時に吠えまくってた「番犬」たちも、恐らく犠牲者(元人間)。最初5人を逃がしてやりたい一心で吠えてくれてたのかと思うと切ない。『ねむれる森の…』でも書きましたが、言葉が通じない・意思の疎通ができない系は個人的にはかなりの恐怖です。ジョジョ5部のトーキングヘッズとかすげーヤだったな〜。
「おまえ、ココアを飲まなかったのね。飲まなかったのね」
キルケーさんは魔女(?)なのに魔術とかじゃなくて、ポタージュとかココアとか何か飲ませないと動物にできないのー?と思ったんですが、元ネタも同じでした。
ところで誰もつっこんでないけど、キルケーさん場面によって身長でかすぎだよ…。登場シーンで2m、隆くんを襲う前のシーンなんか4mくらいない!? フツーに怖い。
収録コミックス
- 天人唐草(サンコミックス)(朝日ソノラマ)
- 山岸凉子作品集〈7〉傑作集1 スピンクス(白泉社)
- 山岸凉子全集〈24〉パニュキス(あすかコミックス・スペシャル)(角川書店)
- 山岸凉子恐怖選〈1〉鬼来迎(ハロウィン少女コミック館)(朝日ソノラマ)
- 自選作品集 夜叉御前(文春文庫ビジュアル版)(文藝春秋)
- パイド・パイパー(MF文庫)(メディアファクトリー)