ステージママに搾取される娘。「汐の声」1982年
あらすじ
17歳の佐和はステージママの言いなりでインチキ霊能力タレントをやっている。
ある時、死んだ母子の霊が出るという屋敷にしばらく滞在することになった、オカルト雑誌の取材陣と佐和ら霊能力者たち。
他の霊能力者が何もいないと言う中、佐和にだけはずっと少女の霊が見えていて…。
ステージママって怖いよね(偏見)。
子供の頃に見たアメリカの幼女ミスコンのドキュメンタリー番組に出てきたステージママがめちゃくちゃ怖くて、ちょっぴりトラウマです。
17歳の霊感少女というふれこみでテレビにちょっと出たりしている佐和ですが、実際にはステージママの言いなりでボロが出ないように神経をすり減らして霊能者のふりをしているにすぎない気弱な女の子です。しかも世間もマスコミもインチキに勘づいてます。
この佐和ちゃん、見た目も性格も岡村響子さんやクネちゃんに似たタイプの、「親に逆らえない大人しい女の子」です。嫌な予感しかしませんね。
手作り弁当を持っていけとうるさく言う佐和ママとか、食べ物の好き嫌いが多い佐和とか、「ご家庭に問題ありそう感」の描写が細かい。
霊能力の才能などないはずなのに、1日目から小さい女の子の霊をバンバン見てしまう佐和。
しかし、この屋敷に出ると噂されてる霊は「26〜7歳の娘と、50歳くらいの母親」なのです。
佐和がインチキで有名なこともあり、スタッフは佐和の訴えを全然信じてくれません。
泣きながら眠ってしまった佐和の耳には、少女の泣き声と母親の声が聞こえてきました…。
「ママ…いやもう」
「我慢おし。ちょっとの辛抱よ」
「だってお腹が痛くなるの……。頭も……。背中も……」
「我慢よ我慢。いい子ね」
この後、佐和が「畳から首だけ出してる少女」を見てしまうのですが、5ページ前のみんながガヤガヤしてるシーンで実はもう出てます。初めて見つけた時ビクッ!てなった。
スタッフの間では佐和のインチキ演技けっこういけるし、もうヤラセでいいんじゃね?ということになり、佐和ちゃんは泣いて半狂乱になっているところを撮影されます。でもまだ誰も信じてない。幽霊目撃情報信じないならやるなよ、こんな企画!
佐和ちゃんはよく泣きます。大体のシーンで泣いてます。『アラベスク』のノンナより泣いてます。
そんな佐和は「泣く少女」の霊と不幸なことに波長が合ってしまった。次に彼女が見たのは、少女が母親を絞め殺している過去の映像でした。
子どもが……母親を殺した!!
あんな小さな子が!!
あんな小さな少女が……母親を……
フリフリの可愛らしいワンピースを着た「小さな少女」が顔を上げると……、顔だけおばさん。ウワー!
おまえは わたしだ
怖いからこのシーンあんまりじっくり見られないんだけど、失礼だけど26〜7歳にも見えないぞ!?
その後スタッフがカメラの映像を確認した結果、ラップ音や少女の霊が入っていたので、やっと佐和の言っていたことが全部本当だったとわかりました。
やったね佐和ちゃん! やっと信じてもらえたよ! ……まあもう佐和ちゃん死んじゃってるんですけどね。
佐和がずっと見ていた少女は、20年前に一世を風靡した子役スター「舞あけみ」だった。
スタッフが恐ろしい噂を話す。
「へ 変なことを聞いたわ、あたし。 あ…あの人
やり手のステージママに く…薬を飲まされて
小人になった……んですって。
成長を止める薬を飲まされて……」
屋敷で死んでしまった佐和は、今でも屋敷の中にとらわれて、舞あけみに追いかけられ続けています…。
ママ……助けてえ
ママ……助けてえ
みんなどこにいるの。助けて
こんな目に遭ってもまだママに助けを求める佐和ちゃんが悲しい。
佐和ちゃん、仕事に嫌気がさして「ママがなんといおうと霊感少女なんてやめるわ!」と決心してたのに…。かなしい…。
収録コミックス
- 山岸凉子作品集〈6〉日出処の天子6(白泉社)
- 山岸凉子全集〈17〉ゆうれい談(あすかコミックス・スペシャル)(角川書店)
- 山岸凉子恐怖選〈4〉汐の声(ハロウィン少女コミック館)(朝日ソノラマ)
- 自選作品集 わたしの人形は良い人形(文春文庫ビジュアル版)(文藝春秋)
- 山岸凉子スペシャルセレクション〈2〉汐の声(潮出版社)