山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

母は娘に嫉妬する。「鏡よ鏡…(旧題:星の運行)」1986年

あらすじ

14歳のママは美人女優の羽深緋鶴。しかし雪はママに似ても似つかぬニキビ面で「子豚ちゃん」と呼ばれるほど丸々と太ったいじめられっ子だった。
ママのような美人に生まれつかなかった自分に落ち込みつつも、ママを誇りに思っていた雪だったが…。


鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰……。

少年漫画ではしばし「父親と息子が敵対する」という構図が出てきますが、女の漫画の世界にも「母と娘はある意味ライバルなのだ」ということをテーマにした作品が昔からあります。有名なのは一条ゆかりの『デザイナー』あたり? 他の山岸作品だと最近の『ヴィリ』がありますね。

7人の恋人にかしずかれる、若く美しいママ。
一方娘の雪は学校では男子にいじめられ、家では忙しいママにほぼ無視される日々。
でもこの雪ちゃん、自分のルックスを悲観しているわりには、諦めずにしっかりパーマかけてオシャレしてるし、憧れのママのしぐさを真似して「しぐさ美人」を目指してます。向上心があっていいですね。しぐさ美人が「笑う時はハンカチを口に当てる」「脚を斜めにして座る」「カップを持つ時は小指を立てる」とかなのは時代を感じますが。

ママに「食べ方がまるでブタ」ときっついことを言われ、「この子の父親も脂性だったから〜」と父親のことを聞かされた雪は自分は一生みにくいあひるの子のまま終わるのかと絶望しますが、ある日現れた、母の8人目の恋人である紳士は、雪は少女時代のママにそっくりだと言います。この紳士は実はママの最初の恋人。

「きみもそのうちママのようなすごい美人になれるよ。その気になればね」

紳士は雪をお姫様扱いし、いろいろなドレスを買ってくれます。しかし紳士と会っていたことがママにばれ、ママ大激怒。
娘に対して初めて真剣にぶつかってきたママは、マシンガンのように毒を吐きます。それは雪が想像もしていなかった「嫉妬」の言葉…。

「おまえが育てば育った分だけ
私はおまえに若さを奪われていくんだ」

ママが、あの美しいママが、この太って笑い者の私を嫉妬している。
というより、私の若さに嫉妬している。

緋鶴ママは「本気を出して装えば雪と同い年くらいに見える」と言われる若々しい絶世の美女で、恋人もわんさかいるのに「子豚ちゃん」の雪にずっと嫉妬していた。7人の恋人も、雪に取られるんじゃないかと怯えていた? この日から雪のママに対する崇拝は消え失せました。

雪は紳士の元へ身を寄せ(ママの王子様を奪い)、「昔ママがやったのと同じように」壮絶なダイエットの後、ママのようにスラリとした美少女に変身します。二代にわたってロリコン紳士にプロデュースされる親子。

そして最後ではなんと雪ちゃんはアイドル歌手としてデビューしてしまいます。ええー。
正直せっかく凄味のあるエレクトラコンプレックス物語だったのに、最後の最後でなんか安っぽい印象になったなーと思ってしまった。「美人女優」にはまだ神秘的な要素があるけど、アイドルってなんかあんまり…。まあでも美人女優の母のライバルとしては打倒なポジションか…。この二人、テレビ局の廊下とかですれ違ったら乱闘騒ぎにならない?
そしてロリコン紳士の謎のプロデュース能力。

この作品でちょっと疑問なのは「神秘的なまでに美しいママ」である羽深緋鶴さんが絵では何故かそれほどの美女に見えないってとこですかね…。『鬼来迎』の奥様か『八百比丘尼』の人魚みたいなかんじに描いてあげればいいのに、なんでこんなにオカマ顔なんだろう…。ついでに言うと痩せてアイドルデビューした雪ちゃんも他の山岸作品だったら「ヒロインの友人役」くらいの顔だよね。

あ、雪が子豚ちゃんだった頃から気になっててついいじめてしまっていた石田努くんかわいいですよね。

収録コミックス

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