山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

ねえ、いつ奥さんと別れてくれるの?「死者の家」1988年

あらすじ

美佐の母は夫の不倫で苦しめられ続けたまま、若くして病死した。
数年後、美佐は勤め先で出会った正志という男性と交際を始めるが、実は彼は既婚者だった。


不倫をすると地獄に落ちるらしい。
「ママの家系は代々不幸な結婚をする女性が出る」と生前の母に聞かされていた美佐。
父とその愛人を疎み家を出た美佐は、会社で出会った男性・正志と初めての恋をします。

ママ、わたしすごく好きな人ができたの。お願い、見守っていてね。

ルンルン気分で位牌に話しかける美佐。しかし正志には実は妻と幼い娘がいたのだった!
問いつめられた正志は必死で「きみを騙すつもりはなかった」「女房とはとうにだめになってた」「妻とは別れるから」という、お約束の台詞を口に出します。山岸作品の不倫ものに出てくる男って嫌いだわー。
美佐は彼の奥さんと娘を昔の母と自分に重ねて苦しむものの、結局別れを切り出せずにお決まりのコースへと…。一度はさようならって言えてたのにね。

「本当に奥さんと別れてくれる?」
「ああ! きっとそうする」
知らなかった…! わたし、ものすごく愚かな女だったんだ。

ある晩、美佐は母が地獄にいる夢を見る…。

パパに苦しめられたママがどうして地獄にいるの。
ママは天国にいなくちゃ。ママは何も悪い事していないんだもの。
わたしがしてるから? ママの娘のわたしがこんな事をしてるから?
ママと同じ立場の女性をわたしが苦しめているから
娘の罪でママは地獄にいるのね。

今までも山岸作品の不倫ものを読んでて「山岸先生…過去になんかあったんですか?」と聞きたくなったことは多々ありますが、この作品は一番濃いですね。普通に「不倫」を「地獄に落ちるにふさわしい罪」として描いている。
「自分が不倫する側、身内が不倫される側」というネタは『月氷修羅』でもやってましたね。あっちは最後の決断が偉かったけど…。

美佐は「このままじゃ一生浮かばれない。きっと別れられる…」と思いながらも彼と別れることができないままズルズルと関係を続けてしまう。
最初は初々しいカップルだった二人も、最後のページでは情事の後のベッドで「ねえいつ奥さんと別れてくれるの」というベッタベタな会話をする典型的な不倫カップルへと変貌を遂げてしまうのでした。
前半の読んでて痒くなるようなウキウキラブシーンは後半で叩き落とすための前フリだよ! 山岸先生はいつも容赦ないです。

収録コミックス

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