山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

グレるって健康的かも知れない。「木花佐久夜毘売」1986年

あらすじ

高校生の典子には3歳上の姉がいる。姉の咲耶は子供の頃から優等生で、両親は咲耶ばかり可愛がっていた。
さらに自分の名前「典子」まで「たった3歳の咲耶が名づけた」という自慢話の種にされ続けた典子はすっかりひねくれてしまっていたが…。


山岸先生だってたまには人死にの出ない姉妹ものを描くよ!
「美人ではないけど優秀な姉」と「美人だけど不出来な妹」という構図は『瑠璃の爪』と同じタイプですね。親が偏愛する対象が逆ですが、どっちも妹が主人公。
姉ばかり愛される家庭で育ち、すっかり不良娘になってしまった典子。いつもどおり夜遊びをしていてエロ親父にからまれた典子を助けてくれたのは偶然にも、咲耶の元同級生・飛渡でした。

「あたしは姉さんとは違って頭悪いから、勉強なんか大嫌い!」

飛渡くんは典子の名前に対するコンプレックスがわかります。何故なら彼の名前「圭」も、死んだ兄の名をそのままつけられた名前だからです。

「姉さんにつけてもらった名前…それ自体はいいんだ。
それはすばらしい事だよ。すばらしい……だけど、そこにきみがいない。
そこには3歳で妹に名前をつけた天才の咲耶さんはいてもきみが…きみの存在が…」

初めて自分のことをわかってくれる人に出会えた典子はそれ以来、典子は子供の頃からの辛かった話を全て飛渡くんに話すようになります。
このお話は「姉妹もの」には珍しくちゃんと救済者が現れるのでハッピーエンドになります。最後の新幹線のシーンのしおらしい典子がかわいい。彼の元に向かう典子を咲耶が窓から見てるシーンがありますが、咲耶は止めたりしなかったのかな。典子がテストで満点取った時自分の手柄にしたエピソードから、あまり性格の良い子ではないと思ってたけど。

わたしでも木花佐久夜毘売になれますように。

このお話を読んで思ったんですが、『鬼子母神』 の瑞季ちゃんといい、山岸作品の「兄弟姉妹と比べられる」系の主人公の場合、ちょっと一時期グレてた子の方がその後の人生うまくいってる気がします。両親の言うこと真面目に聞いてないで、てきとーに反発しちゃった方がいいのかも知れませんね。だってほら、姉妹ものじゃないけど、親の言うこと真に受けた例ってあの岡村響子さんとかですよ。 典子ちゃんも瑞季ちゃんも家での評価はダメ人間でも学校ではそこそこ人気者だったし。家庭で顧みられない子が外の世界に居場所作れてる描写を見ると安心します。『常世長鳴鳥』の雪影なんかそれすらなかったもん…。

収録コミックス

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