山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

1980年代後半

理由も動機もわからない怖さ。「蛭子」1985年

あらすじ 上京して一人暮らしを始めた貧乏女子大生・里見は、一度挨拶に行っただけの遠縁の美少年・春洋(はるみ)に懐かれる。 しょっちゅう遊びに来るようになった春洋を、初めは弟のように可愛く思っていた里見だが、春洋が部屋に来るたびに奇妙なことが…

男を狂わせる美幼女は蛇神なのか、それとも。「蛇比礼」1985年

あらすじ 高校生の達也の家に、孤児となった従妹の美少女・相馬虹子(にじこ)が引き取られて来た。 しかし、気のふれた父に育てられた虹子は、その異常なまでの妖艶さで周囲の男たちを狂わせていく。 カジュアルな服を着た虹子のガッカリ感。 同じく魔性の…

お姉ちゃんは無敵。「月読」1986年

あらすじ 神々の住まう高天原。暗い夜の神・月読(ツクヨミ)は太陽神である天照(アマテラス)を慕っているが、天照はいつも風の神・須佐之男(スサノオ)ばかり可愛がり、月読には冷たかった。 天照や須佐之男のように明るい男になりたいと願う月読は、愛…

王朝の年の差兄弟愛に萌え。「水煙」1986年

あらすじ 男大迹大王(おほどのおおきみ)と婢の子である13歳の阿豆王(あつのきみ)は、後見人のクロヒトが死に、父の唯一の手がかりである耳飾りを手に都へ向かうが…。 「都の人はみんな冷たいんだよ。一人を除いてはね」 処世術に長けた少年が「王子様」…

桜がテーマのオムニバス。「天沼矛」1986年

「桜」をテーマにしたオムニバス。 まったく雰囲気の違う3編の短編で構成されています。個人的には第二話が薄ら怖くて好き。 第一話 夜櫻 どうしてここはいつも夜なのあの桜はなぜいつもいつも花びらを散らすの? 尽きることもなく 神話の世界。一人ぼっちで…

社会に適合できない天才はどう生きていけばいいのか。「牧神の午後」1989年

あらすじ 1909年。ロシアバレエ団の新人、ヴァーツラフ・ニジンスキーは「アルミーダの館」で衝撃的なデビューを果たし、その異常なまでの才能で人々を驚かせ続けた。 しかしバレエマスター、ミハイル・フォーキンだけは、ニジンスキーの天才性の裏にある「…

兄妹デュオの栄光の影。「グリーン・フーズ」1987年

あらすじ トビーは歌も歌える人気子役。一世を風靡していたトビーだったが、声変わりし、体が成長してしまったことで仕事がなくなる。 一方、歌の才能を見出された気弱なマーシャはトビーと兄妹デュオを組むことになるが…。 「僕がピアノを弾くよ。 マーシャ…

姉さんになり代わりたい。「奈落 タルタロス」1988年

あらすじ 18歳のエブリーヌには2歳上の姉・デルフィーヌがいる。 瓜二つの二人だが、才能ある女優であるデルフィーヌに比べ、エブリーヌは常に「人生の敗者」だった。 何をやっても姉に勝てないエブリーヌは、いつしかデルフィーヌの真似ばかりするようにな…

ねえ、いつ奥さんと別れてくれるの?「死者の家」1988年

あらすじ 美佐の母は夫の不倫で苦しめられ続けたまま、若くして病死した。 数年後、美佐は勤め先で出会った正志という男性と交際を始めるが、実は彼は既婚者だった。 不倫をすると地獄に落ちるらしい。 「ママの家系は代々不幸な結婚をする女性が出る」と生…

笛を吹く時、何かが起こる。「笛吹き童子」1986年

笛にまつわる短編二本立て。 第1話「石笛」 山梨のとある旧家。亡くなった祖父の葬式にやって来た親戚は、宝の山(遺品)を漁りに来たハイエナばかり。 残された祖母は曾孫である美沙ちゃんに倉の鍵を渡し、「石笛(いわぶえ)」という古い笛を渡します。お…

海で死んだあの子の記憶。「海の魚鱗宮」1985年

あらすじ 娘の和美を連れて、久しぶりに郷里へ里帰りした寿子(としこ)。無意識のうちに自分の郷里を嫌っていたことに気づいた寿子は、その原因である、昔海で溺れて死んだ「奈保子ちゃん」という少女のことを思い出す。 あの夢の中の女の子は……ナ・ヲ・コ……

真っ白なレースの下の、甘く劣悪な臭い。「星の素白き花束の…」1986年

あらすじ 亡くなった父の愛人の娘(異母妹)を引き取ることにしたイラストレーターの聡子。 初めて会う異母妹の夏夜(かや)は中学3年生。 夏夜は聡子のイラストから抜け出てきたような可憐な美少女だったが、異常なほど無口で陰気で偏食、そして男にだけは…

まさかこれで終わりじゃないでしょ?「ある夜に」1981年

8ページの短いお話。『化野の…』と似た「死者が町を歩く」話ですが、あっちの主人公は自分が死んだことに気づいてないのに対して、こっちの女性達は全員理解してあの世へ向かってます。 4人の女性が町を歩く。一人は華の道、一人は砂の道、二人は石の道を歩…

グレるって健康的かも知れない。「木花佐久夜毘売」1986年

あらすじ 高校生の典子には3歳上の姉がいる。姉の咲耶は子供の頃から優等生で、両親は咲耶ばかり可愛がっていた。さらに自分の名前「典子」まで「たった3歳の咲耶が名づけた」という自慢話の種にされ続けた典子はすっかりひねくれてしまっていたが…。 山岸先…

母は娘に嫉妬する。「鏡よ鏡…(旧題:星の運行)」1986年

あらすじ 14歳の雪のママは美人女優の羽深緋鶴。しかし雪はママに似ても似つかぬニキビ面で「子豚ちゃん」と呼ばれるほど丸々と太ったいじめられっ子だった。ママのような美人に生まれつかなかった自分に落ち込みつつも、ママを誇りに思っていた雪だったが……

少女の死体を求める市松人形。「わたしの人形は良い人形」1986年

あらすじ 昭和21年。初子という少女が事故で死んだ。葬儀では副葬品として立派な市松人形が添えられたが、どういうわけかその人形は初子と一緒に焼かれないまま箪笥に仕舞われてしまった。それ以来、人形は女の子の死体を求めるようになる…。 「このお人形あ…

人間には制御できない巨大な力。「パエトーン」1988年

あらすじ 全世界を震撼させたチェルノブイリ原発事故。そして、日本にも続々と作られている原子力発電所。その恐ろしさも知らず、人類は制御できない日輪の馬車を駆っている愚かな「パエトーン」と同じなのではないだろうか? 原発への問題提起作品。 チェル…

どうしてお姉ちゃんばかり…。「常世長鳴鳥」1985年

あらすじ 中学生の雪影(ゆきえ)は、家族の愛情を一身に受ける美しい姉・花影(はなえ)を幼い頃から憎んでいた。自分の将来、好きな人まで奪われそうになった雪影は、ある行動に出る…。 どう考えても家族が悪い。 美しい姉・花影は冒頭からいきなり川には…

ひたすらダベるお姫様たち。「月の絹」1987年

春は弥生の佐保姫。十代前半。食べ盛りの末っ子。夏は夜空の夕星(ゆうづつ)姫。彼氏ありで人生の絶頂期。秋は紅葉の竜田姫。不倫真っ最中。厚化粧。冬は吹雪の打田姫。お墓コンサルタント。男運はないが自立している。 春夏秋冬のお姫様姉妹たちがひたすら…

パパは僕が苦しい時だけやって来る。「コスモス」1987年

あらすじ 小学生の裕太は喘息持ち。発作が起こるとママはいつも心配そうに裕太を看病してくれる。 優しいママがパパの会社に電話をかけると、パパが帰ってきて車で病院に連れて行ってくれるのだった。 個人的に山岸サイコホラーの最高傑作。わたくし、この話…

それは自分にも見えない悪意。「瑠璃の爪」1986年

あらすじ 上杉絹子(28)は、実姉の敦子(31)を刺し殺した。 その後、複数の関係者の証言によって姉妹の関係は少しずつ浮き彫りになっていく。 「関係者への取材」という形をとった構成の臨場感がすごい。本当にこういう事件があったんじゃないかと思ってし…

そして少女は神になってしまった。「時じくの香の木の実」1985年

あらすじ 正妻の娘・日向、妾の娘・日影。 ほぼ同時に8歳になった二人は、巫女である大叔母の屋敷に連れてこられ、どちらが跡継ぎとなるかが試される。差し出されたのは奇妙な果実…。 「それを食べるのです。それを食べるとおまえ達のどちらかが 永遠に年を…

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