山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

娘に捨てられたら生きていけない。「メディア」1997年

あらすじ

有村ひとみはバイトに就職活動に忙しい短大2年生。
夫に不倫されている母親はひとみを溺愛し、ひたすら尽くそうとする。このままではいけないと思ったひとみは母から自立しようと留学を決意するが…。


母がしんどい。
夫に捨てられた代わりに、娘のひとみにどこまでも執拗にすがりつく母親。
「お母さん、あんたのためならどんなことでも我慢できるんだから」と言いながら、お弁当作りも夫と離婚しないのも、結局は全て自分のエゴ。この母親の容姿は山岸漫画に出てくる美しい奥様じゃなくて普通の中年太りのおばさんなので、それが逆に怖い。ひとみちゃんがボーイッシュなのは「夫代わり」にされていることの暗示か。

自分にベタベタとすがる母を正直疎ましく思いながらも、夫に裏切られた母に冷たくできないひとみ。手作りお弁当を拒否できず絶望。「このままじゃいけない」とひそかに計画を進めていた留学が母にばれてしまいます。「嘘つき! 私を騙したのね!」と荒れる母。ひとみが嘘をつかなきゃいけなかったのは、あんたがそういう人間だからでしょ?

やがて「2年で帰ってくる」というひとみの言葉に、泣く泣く留学を許してくれた(かのように見えた)母。しかし出発の2日前…。

「ごめんね、ごめんね。
お母さん、ひとみに捨てられるの耐えられないの。ごめんね」

ひとみちゃんが本当にかわいそう。
山岸先生は努力しない子を殺しがち
だけど、ひとみちゃんはちゃんと「お母さんと離れないといけない。このままだとお母さんを殺しちゃう」と危機感を持っていたし、そのために留学も自分で決めたし、自分の将来を模索して勉強もバイトもこれ以上ないくらい一生懸命がんばってたんですよ! それに大学の授業にもちゃんと耳を傾けてて(女性学を受講している)全ての基準が母!状態にもなってなかったし、友達や男の子とも交流できる、未来あるいい子だったのに…。なのに…。メディアの話を聞いたひとみが「あたしなら我が子を殺さず心変わりした男のほうを殺すなあ」と言っていただけに悲しい。

「日本の子殺しは、女が母親役にしがみついた時おこるのです」

ひとみが見た「母親を殺す夢」は夢占い的には母親からの精神的自立をあらわしており、わりとよく見られるタイプの夢だそうです。母が人面魚(シーマン?)になってる夢のシーンめちゃくちゃ気持ち悪いですよね。

収録コミックス

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