山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

人は誰だって褒められて伸びるタイプなんだよ!「ブルー・ロージス」1991年

あらすじ

黎子(たみこ)は男性と付き合ったことがないまま30歳になろうとするイラストレーター。
子供の頃から優秀な妹と比べられて育ったせいで自分に自信が持てずにいた黎子だが、ある時男性編集者の和久と出会ったことで、黎子の人生は少しずつ変わりはじめる。


「わたしぐらい役立たずの人間はいないわ。
気はきかないしグズだし、なにをやってもドジだったのよ」

最初にこの短編を読んだ時、私はまだ小学5年生くらいで、その時の感想は「主人公に彼氏ができて? 料理が上手くなって? …で、別れて終わり? 地味な話だなー」というかんじで、全然ピンときてませんでした。
でも20歳を過ぎた頃に読み返してみたら…すごい染みたんですよ。
子供時代、出来の良い妹(明子)と比べて親から褒められることがなかったせいで自分に自信の持てなかった黎子。大人になって初めてできた恋人にありのままの自分を認めてもらえて、愛情込めて褒められたことによって自分を認められるようになります。

「安心して。黎子さんそんなにドジじゃないって。
もっともドジの黎子さんも可愛いと思うけど」

わかる! わかるよ今なら黎子の気持ちが! そう、人は褒めてもらえないと自信なんか持てないの! 黎子は子供の頃に与えられなかった「自信」を、大人になってからようやく与えられたんですよ。めっちゃ良い話ですよ。山岸先生の「救済系」(←勝手にこう呼んでいる)はいつもじーんとくるなぁ…。彼氏GJ! まあこの和久さんは結局二股かけてたんですけどね!
二股というオチがついてしまったけど、「恋」というものは大変便利ですね。和久さんが黎子のどこに惚れたのか知らないけど、恋をすればあばたもえくぼ。黎子のように幼少期に親から褒めてもらえなかった人間でも、惚れてくれた人間からの褒め言葉はワンチャン期待できます。言わば敗者復活戦です。
和久さんと別れた後、彼に褒めてもらった料理を自信を持ってチャカチャカ作る最後のシーンなんか泣けます。

これはあの人から与えてもらったものだ……。
どんな料理もおいしいと言って食べてくれるから
気がついたら自信をもって料理することができるようになっていたんだわ。
そうか、明子のあの自信が子供の頃与えられたように
わたしは得そこなった自信をあの人に与えてもらったんだ。

この話は「喪女黎子」「自信のない黎子」と いうふたつのテーマがあると思うんですけど、私は「自信のない黎子」の物語にすごいグッときちゃったので、和久さんが実はちょい二股だった〜とか、黎子が傷つきたくなくて目を背けていた〜とか、男女の恋愛沙汰がどうこうなるあたりはわりとどうでもいいかな。でもまた数年後読んだら違う感想が出てくるのかも。

「実際にはありえない、線の細い植物的な男性」のイラストが売りだった黎子が、男を知った後にはその絵が描けなくなった…というくだりは無駄に生々しい。
星の素白き花束の…』の聡子さんの時も思ったけど、絵柄変わった後のイラストちゃんと売れてるのか? 心配。

収録コミックス

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