山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

ひたすらダベるお姫様たち。「月の絹」1987年

春は弥生の佐保姫。十代前半。食べ盛りの末っ子。
夏は夜空の夕星(ゆうづつ)姫。彼氏ありで人生の絶頂期。
秋は紅葉の竜田姫。不倫真っ最中。厚化粧。
冬は吹雪の打田姫。お墓コンサルタント。男運はないが自立している。

春夏秋冬のお姫様姉妹たちがひたすらダベリング(死語)するだけの話。ダラダラした雰囲気で好きです。最初は日本髪・着物のお姫様たちですが、なぜか途中で現代風に変身。なぜお姫様なのか、なぜ変身するのか、なぜダベっているのか。一切の説明はないぞ!

お姫様たちの話題は次から次へと変わります。
ファッション、カラーコーディネイト、ヘルシーなお料理、メイク、不倫、お墓…。
夕星姫の作るヘルシー弁当が美味しそう! 山岸作品に出てくる食べ物の絵かなり好きなんですが、いつも同じ画風だからアシさんが描いてるのかなそれとも山岸先生が?

それにしても台詞に時代を感じる。
「不倫にいじめときてはあまりに流行に乗りすぎよ」
「ほら、今流行りのモノトーンファッション」
「昨今の健康食品ブームに乗って動物性蛋白質はほとんどなしよ」

こんななごやかな漫画ですが、「不倫してる女」がしっかり出てくるあたり、山岸作品です。

「不倫・不倫といわないでしょ。不倫だって立派な恋よ。
愛もないのに妻という名だけの座にしがみついている奥さんより
あたしのほうがよっぽど彼を愛しているわよ」

「そうかしら。奥さんや家族をあざむいて、
つまりはいくばくかの人間を不幸にしておいて愛と言い切れるかしら。
不倫する者は男も女も愛を語る権利ははじめからないと思うな、あたし」

「なによ、当事者じゃない者が気楽に正当論なんか振り回さないでよ。
あたし達のはその辺の不倫とわけが違うわよ

鬼女板の不倫スレで脳内お花畑って言われてそう。
「あら違う不倫なんてあるのかしら。
自分達だけは違う恋をしているつもりで、みんな同じ末路をたどるのが不倫というものだわ

「あたしそしられる事も傷つくことも恐れはしないわ。
ようはあたしが彼をそれだけ愛しているかという事だもの」

「ご立派な事ねえ。そういう事は誰一人に迷惑かけてない時言うもんよ」

山岸先生、ほんとはいろんな不倫漫画でこれ言いたいのかな…。この漫画、いろんな話題が次々と出てきますが、グルメ・ファッション・メイクとかの話に比べて「不倫」「お墓」の話の時だけ熱意が違う気がします。墓相の話もかなり長くて濃い。

妹たちに「ああなってはおしまい」みたいに言われてる一番上の打田姫ですが、私はこのお姉さんが一番好きです。男運が悪く恋ももうできなそうなドライフラワーだけど、お墓コンサルタントとして独り立ちしてて本も出してて偉いじゃん。

佐保姫はかわゆいファッションとお肉が好きなお子ちゃま。夕星姫は若く、世紀の恋の真っ最中で幸せ、でも姉の不倫に対してはかなり毒舌。一番良い時代っぽい。打田姫もドライフラワーだけど、恋に悩む時代を過ぎて別の方面で概ね安定してる。心配なのは竜田姫。若さにも陰りが出始めて濃い化粧、彼は不倫のミドルエイジ…。一人だけ負の面が多めな気がします。

「ところであたし達は何者なの?」
「たんにおしゃべりしてる女なんじゃない」

収録コミックス

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