山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

どうしてお姉ちゃんばかり…。「常世長鳴鳥」1985年

あらすじ

中学生の雪影(ゆきえ)は、家族の愛情を一身に受ける美しい姉・花影(はなえ)を幼い頃から憎んでいた。
自分の将来、好きな人まで奪われそうになった雪影は、ある行動に出る…。


どう考えても家族が悪い。
美しい姉・花影は冒頭からいきなり川にはまって死んでます。そこから始まる雪影の回想。
生まれた時から病弱な花影は家族から心配され、愛されます。雪影は健康体ゆえに家族からほっとかれてしまいます。
雪影はやがて愛されない鬱憤を姉への復讐で晴らすようになります。八つ当たりする、わざと花影を階段で転ばせる、鳥の羽散らしてわざと喘息を起こさせる。

黒のヘレネー』のクリュタイムネストラが言っていたように、人の性格は周りの態度や言葉によって作られていくのだ、ということを山岸先生は作品でたびたび語ります。
ばれないように姉に嫌がらせをする性格の悪い雪影だって、昔は普通にいい子だったはず。両親や祖母が花影ばかりを可愛がり、雪影を顧みなかったせいで、雪影の心はどんどんねじくれていったのです。
一方、家族に大事にされて育った花影はおっとり優しいお姉さんで、雪影に怒鳴られても謝るだけ。『奈落』のお姉さんと同じように、妹に憎まれてるけど本人は優しくて妹を庇ってくれる良い人です。悪いのは差別した家族!
ちなみに花影は意味もなく美しい着物姿をコマぶち抜きで披露します。一応「花影は脚が悪いのをごまかすために着物を着ている」という設定ですが、山岸先生、この頃お着物描きたかっただけらしい。でも細帯を下の方で結んで楽そうな着付けしてるので「脚が隠せて楽な服」として着てる感がちゃんとあって、芸が細かいな〜と感心しました。

雪影の憧れの先輩と花影が親しくなってしまったことで、雪影の怒りはとうとう頂点に。

なによ! なにもかも一人占めするつもり!?
あんたは何だって持ってるじゃない!
あたしの分も何もかも全部あんたが取ってったんじゃない。
半分死んでるくせに、なんだってそんなに欲ばりなの!

憤怒の形相で花影の半衿をズタズタに切り裂く雪影。
この後花影は雪影に川に突き落とされ、冒頭につながります。しかし、花影の手には雪影の制服のボタンが握り締められていたのでした…。
花影、ずっと家にこもっててやっと同年代の男の子と恋ができるかと思った矢先に、好きな人に会えると騙されて殺されるなんて不憫…。何も悪いことしてないのに。自覚なく家族の愛を一人占めしただけなのに。

わたし、これからお姉ちゃんの分もうんと親孝行するわ。
お母さん達も気がつくと思うのよね。
あたしがお姉ちゃんより、ずっとずっといい子だということに。

収録コミックス

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