幽霊と根比べ。「だれかが風の中で…」1973年
あらすじ
盲目の少年ジュールのピアノ教師兼看護婦としてラガッシュ家にやって来たニコル。
ジュールは少しずつニコルに心を開いてくれるようになる。しかしニコルはその家でたびたび謎の少女の姿を見かけ…。
「彼女はね、母親にすてられたんだ。再婚のじゃまだったから。
塔に住んでるんだよ。ひとりぽっちでさびしくていつも泣いているよ」
仕事でめったに家にいない兄、寂しがりで毎晩パーティー出かける母。忙しい家族に顧みられない孤独なジュールのたった一人の友達は、過去にこの屋敷で自分と同じように一人ぼっちで死んでいった少女の幽霊・エミリエンヌ(ご先祖様)。
屋敷の中を何十年も彷徨っているエミリエンヌは、病弱なジュールをあの世に連れて行こうとやって来ます。ずっと後ろ向きで顔を見せないエミリエンヌが怖い。
ジュールもエミリエンヌを救いとしていました。なぜなら、彼の見えない目に唯一見えるのがエミリエンヌだからです。
「死ぬってことはみんなの目には見えなくなることなんだ!
だけど見えないことが死んだことならば
ぼくなんてだれひとり見えやしないんだ!
エミリエンヌがみんなの目に見えなくたって
ぼくにとっては生きているんだ、ほかのだれよりも。
ぼくの…ぼくの友だちなんだ」
なんてことだろう、孤独のまま死んだ子どもは
あの世に行く道を見つけることができないのだ。
いまエミリエンヌは彼を、ジュールをともなってその道を行こうとしている!
ジュールがエミリエンヌ以外のものに目を向けないと連れて行かれてしまう! 一緒に池に落ちて以来、わりとニコルに心を開いてくれているジュールですが、いかんせんニコルはジュールの兄ピエール(イケメン)に惚れているためそれをジュールに見透かされ「どうせ俺より兄貴なんだろ」と、なかなかエミリエンヌ>ニコル>その他の図式が変えられません。
やがてジュールは危険な状態に。ニコルはジュールがエミリエンヌに捕らわれぬよう、片時もジュールから目を離さぬよう、エミリエンヌと根比べ状態になります。
しかし、ピエールといい雰囲気になったニコルは一瞬だけジュールのことを忘れてしまう! その直後、ニコルの耳には歓喜に満ちたエミリエンヌの勝利の高笑いが聞こえ…。
私には見えた。
孤独という名の生をぬぎすて
ジュールとエミリエンヌが手をとりあって死への道へと走り去る姿が…
ニコルはピエールにウットリしてるけど、もっと弟さんを愛してあげてくださいとニコルが言ってるのに「でも会社が〜」とか言う男がそんなに良い男か…?