恋に思い詰める年頃。「ハーピー」1978年
あらすじ
高校生の佐和春海は、同級生の美少女・川堀苑子にだけ、死臭のような奇妙な「臭い」を感じるようになる。
死臭を振りまきながら自分を誘惑する苑子を、佐和は女面鳥獣の化け物「ハーピー」なのだと思うようになり、正体を暴いてやろうと思う。
最初それに気づいたのは 臭いだった!
『キルケー』みたいな「少年が化け物に襲われる話」かと思いきや、実は。思春期の恋心と受験ノイローゼが織りなす狂気のハーモニー。
佐和はある日から同級生の美少女・苑子に妙な臭いを感じるようになる。授業で死臭を撒き散らす化物「ハーピー」の話を聞いて以来、川堀苑子の背に蝙蝠の羽根が見えるようになり、彼女のことで頭がいっぱいになってしまう。彼女はハーピーなのではないか?
蝙蝠のことをかわほり……川堀ともいうし
苑はどうかすると死と似ている。
などと言いながら紙に苑子の名前を書きまくる佐和。「どうかすると」じゃないよ!
苑子は妖しい流し目で佐和を誘惑したり、テレパシーで話しかけてきたり、すごい目で睨んできたり、無駄に脚線美を見せつけてきたり佐和にだけちょっかいを出してきます。
最初からずっと佐和の一人称で語られてきた物語が、ラストで一転。
『夜叉御前』もそうですけど、山岸先生は主観的視点から客観的視点に切り変わる瞬間を描くのが最高に上手い。
これをやれるのは正体に気づいてる僕しかいないと、ハーピーの証拠を突き止めるためシャワー中の苑子に突撃する佐和! 彼女の背中にはやっぱり蝙蝠の羽があった! 殺してやるぞ!
…実際に佐和くんのやったこと→苑子ちゃんをチラチラ見る、ノートに苑子苑子と書きまくる、ストーキング、風呂覗き、殺人未遂…。
受験ノイローゼと恋の病で若くして人生をかなり棒に振った佐和くんが気の毒。恋くらい普通にできればよかったのにね。
ところで、いつもの山岸作品なら「苑子は本当にハーピーだったのか、それとも佐和の幻想だったのか、それは誰にもわからない…」という感じにまとめそうですが、この話では苑子ちゃんは100%ただの女の子、ただの被害者として描かれてます。100%佐和くんの思い込みです。
苑子ちゃんも美少女というだけでこんな目に遭って大変だね。
「ハーピーを調べれば調べるほど彼女にピッタリあてはまって
ええ、ぼくにだけはわかったんです。
ぼく、ほっとけないと思ったんです」
収録コミックス
- ハーピー(サンコミックス)(朝日ソノラマ)
- 山岸凉子恐怖選〈2〉メデュウサ(ハロウィン少女コミック館)(朝日ソノラマ)
- トップレディカラーシリーズ 山岸凉子(朝日ソノラマ)
- 山岸凉子作品集〈7〉傑作集1 スピンクス(白泉社)
- 山岸凉子全集〈23〉ドリーム(あすかコミックス・スペシャル)(角川書店)
- 自選作品集 天人唐草(文春文庫ビジュアル版)(文藝春秋)
- 山岸凉子スペシャルセレクション〈1〉わたしの人形は良い人形(潮出版社)