山岸凉子漫画感想ブログ

山岸凉子先生の漫画作品の感想を書いていきます。普通にネタバレしてますのでご注意ください。

(自分に都合の)良い人と結婚したい!「二口女」1992年

あらすじ

イラストレーターの由良子(ゆらこ)は、今年こそ結婚しようと次々にお見合いを繰り返すが、気に入る男性が一人もいない。
由良子の姪・紫(ゆかり)は由良子のお見合いを観察するうちに、女のエゴ、男のエゴを知るのであった。


「3高なんていってる女性もいるらしいけど、くだらないわよあんなこと」

「気持ちだけは若い、名前に由の付くイラストレーターの叔母」&「寒色系の名前のしっかり者の姪」という、『あやかしの館』や『ケサラン・パサラン』的な組み合わせの二人が出てくるお見合いマンガ。3高とか最近聞かないな。
若いのにしっかり者でキャピキャピしてなくて自分でも可愛げがないとわかってる紫ちゃんがかわいくて好きです。
由良子さんは、お見合いをたくさんしていくうちに、言葉とは裏腹な自分の本当の気持ちに気づきます。というか、紫ちゃんにつっこまれます。

「正直におっしゃい。あなたはね、3高のうちひとつでも欠けていれば気に入らない人なのよ。
おまけに決定的な理由は3人ともハンサムじゃないということなのよ」

「そうなのよ。わたしってすっごい面食いだったのね。
でもって目一杯条件に左右される女だったのよ」

由良子さんは口では「ハンサムには興味ない」「人間は中身よ」と言っていたものの、自分でも自覚なしにハイスペック男子(今風に言い替えてみました)を求める女だったのです。……いや知ってたよ! 由良子さんのキャラどう見ても山岸作品に出てくる面食い女キャラじゃん!
「自己(おのれ)を知りなさい自己を! 幾つなのよ」
しかしタイトルの「二口女」が出てくるのはもう少し先の展開。
3高かつハンサムという虫のいい条件にピッタリ合う男性が奇跡的に見つかり、舞い上がる由良子。
しかしその男はとんでもないことを言い出したのでした。

「妻がキャリアウーマンならそれでいい。家庭的な女は女で他にいますからね」
「歴史を振り返っても成功した男は何人もの女をかかえていたんですよね」
「経済力が許せばそれも充分できることですからね」


この発言にはさすがの面食い由良子さんも怒りました。お見合いの席で「正妻の他にも数人の女を囲うつもりですよ」とか言われたらそりゃ怒ります。
「世の男性は皆こう考えているのだけどずるいので隠している。でも僕は嘘はいやですから
バカ正直ですね。えっ今までどうやって生きてきたのこのイケメン…。
「あれが男の本音か」と落ち込む由良子さんを、二十歳そこそことは思えない渋い例え話で慰める紫ちゃん。

「めしを食わない女なんてこの世にいるはずないのにそれを望む男と
愛人の存在に平気な女がいるはずだと考える男は同じなのよ。
自分にとって都合のいいことだけを望む男は、結果的には二口女を呼び込むことになるのよ」

「…とするとわたしも同じだわ。めし食わぬ女房を望んだ男と同じだわよ。
自分に都合のいいことばっかり。3高にハンサムなんて…」

「仏教について一晩中語り合える人が良い」「身長が2m以上じゃないとイヤ」とかの場合はどうなのか知りたい。

最後は由良子さんが持ち前の明るさを取り戻してギャグで終わる。「30過ぎの女がお見合いを通して自分自身を知る」というストーリーは『朱雀門』に似てますね。また、よしながふみの『愛すべき娘たち』にもお見合いを通して自分を知るエピソードが入ってます。お見合いって実際、たくさんの人に会っていくうちに人間的に成長してしまいそう感ある…。

「二口女」は全国にいろんな説があって、紫の言うように「めしを食わない女しか嫁にもらわないと豪語する主人公(都合の良い理想のしっぺ返し系)」という形もあれば、「単にケチな主人公の家に勝手に女房がやって来る(巻き込まれ型)」という形もあり、後者の方は「自分に都合のいい嫁」を積極的に欲しがってるわけではないのでそれほど悪い人じゃないと思うよ!

収録コミックス

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