鬼門全開おばさんが行く!「あやかしの館」1981年
あらすじ
葵は高校に通うために、叔母の由布子の家に居候することになった。
浮世離れした由布子の性格にも慣れてきた頃、葵はその家で起こる奇妙な現象に気づく。
自宅がお化け屋敷。
この後『二口女』の由良子さん&縁ちゃん、『ケサラン・パサラン』の由良子さん&紫苑ちゃんへと続く「気持ちだけは異常に若い、名前に由の付くイラストレーターのおばさん&寒色系の名前のしっかり者の女の子」という二人が出てくる作品群の一番最初の作品です。
その中で一番どうかしている由布子さんは、なんか微妙に失敗した手抜き建築の洋館に住んでいましたが、その家は変なことばかり起きます。怯える葵ちゃんですが、由布子さんは「えーでもしょうがないじゃない」みたいな反応で終わらせてしまいます。図太い!
この話に出てくる由布子さんの「あやかしの館」は山岸先生が当時住んでいた家をモデルにしただけあって、葵ちゃんの恐怖体験が妙にリアルで怖いです。家電が信じられないくらい故障する。ドアも開いてないのにドアの開く音。玄関ドアの覗き穴から見える、金色の光をひいて歩く透き通った人…。
最後はギャグで終わらせてくれてるのがありがたいですが、やっぱり怖い。「寝てると近づいてくる誰かの足音と吐息」が一番イヤですね。でも金色の帯はちょっと見てみたいかも?
「おかしいと思ってたのよね、この家。
とくに玄関がよ。信じて。ね! 由布子さん」
「だからってどうしようもないではありませんか」
ツッコミ担当の家政婦・寒川さんには理由がわかってました。
「お玄関が表鬼門なんですよ、この家。
古いことをいうとお思いでしょう。
でも玄関が鬼門じゃ、何かが通ってもあたりまえなんですよ」
いつもクールな寒川さんが「この家より由布子さんが怖い」とか言い出して笑った。
『山岸凉子全集〈17〉』の巻末には山岸先生のインタビュー記事「山岸凉子の幽霊譚」が載っていて、『あやかしの館』に出てくる不思議エピソードは全部、山岸先生が自分の家で実際に体験したことだと語っています。このインタビューの時はすでに「鬼門」の玄関は改装されていたらしい。
「玄関に貼ったお札だけがはがれるんですよ」
「鬼門を閉じたら精神は平穏になったけど、仕事は鬼門が開いてた時の方が調子が良かった」という話が私は大好きです。
収録コミックス
- あやかしの館(プチ・コミックス)
- 山岸凉子作品集〈10〉傑作集4 夏の寓話(白泉社)
- 山岸凉子全集〈17〉ゆうれい談(あすかコミックス・スペシャル)(角川書店)
- 山岸凉子恐怖選〈4〉汐の声(ハロウィン少女コミック館)(朝日ソノラマ)
- 山岸凉子スペシャルセレクション〈10〉ヤマトタケル(潮出版社)